変わらない組織の深層 ー現場で起きていた”見えないプロセス”
- Akemi.Hyakuno
- 6 日前
- 読了時間: 5分
更新日:2 日前

これは、製造業の生産技術部を舞台にした“変わらない組織の深層”を描くフィクションです。
しかし、そこで起きていることは、多くの現場で実際に起きていることでもあります。
【プロローグ】
月曜の朝。
東海精密工業・生産技術部の会議室には、機械油の匂いがまだ微かに残っていた。
しかし、その空気よりも重たい沈黙が、部屋を満たしていた。
机の上には、「AI搭載 生産ライン最適化システム導入計画書」と書かれた分厚い資料。
佐伯直樹(52)は、資料をめくる手を止め、部下たちの表情をそっと見渡した。
高専を卒業して30年。
技術一筋で会社を支えてきた。現場にも経営層にも顔が利く“橋渡し役”。
そろそろ定年が見えてきて、「残りの時間で会社に恩返しをしたい」という思いが強くなっている。
しかし、今日の空気は、いつも以上に重い。
田中(38)は腕を組み、目を伏せている。
三浦(29)は資料を見つめているが、目はどこか遠い。
吉岡(50)は無言でコーヒーをすすっている。
沈黙が続く。
「……どう思う?」佐伯が口を開いた。
田中がため息をつく。
「どうせ、また現場はついてこれませんよ。前のシステムだって、結局使われてないじゃないですか。」
三浦が小さくつぶやく。
「現場の声、誰も聞いてないですよね……」
吉岡は資料を閉じ、ぽつりと言った。
「上は“変われ”って言うけどよ。変わらないのは、俺たちじゃなくて……会社の方だろ。」
その言葉に、佐伯の胸がざわついた。
(何かがおかしい。でも、その“何か”が分からない……)
一方その頃、人事部の会議室では。
藤堂里奈(38)は、「組織開発アプローチによる生産技術部の変革プラン」と書かれた資料を前に、ひとり気合を入れていた。
外部研修で学んだフレームワーク、心理的安全性、関係性の質、プロセスコンサルテーション。
頭の中には“正しい理論”がぎっしり詰まっている。
(どうして伝わらないんだろう。私、なんとかして現場の助けになりたいと思っているだけなのに…) (私は、間違っていないはずなのに……)
(今日こそ、佐伯課長に理解してもらわないと)
しかし、彼女はまだ気づいていない。
その“正しさ”が、現場の疲弊をさらに深めていることを。
そして、生産技術部という、製造現場における知的労働の“最後の砦”。
その文化と、そこで働く人たちの心持ちを、自分がまったく理解できていないことを。
その日の午後、新システムのテスト運用でトラブルが発生した。
現場から怒号が飛ぶ。
「こんな仕様じゃ使えない!」
「誰が決めたんだ、これ!」
生技部は製造現場との板挟みになっていた。 打ち合わせのために偶然、その場に居合わせた藤堂かその光景をみて言った。
「この生技部には心理的安全性が足りない」
それを聞いた三浦がぽつりと漏らした。
「もう……限界です…」
その言葉に、佐伯の胸が締めつけられた。
(俺は……何を見落としてきたんだ)
藤堂もまた、
(なぜ伝わらないのか、こんなに力を尽くしているのに…)
と混乱していた。
ここまでの物語は、多くの組織で“実際に起きていること”そのものだ。
施策を重ねても変わらない理由は、決して施策の質や量の問題ではない。
変わらない理由は、施策が届かない“深層”にこそある。
■ 1. 生産技術部に潜む“変わらなさの構造” ーー”最後の砦”に積み重なった見えない壁
生技は製造業の中で最も厳しい場所。技術的にも精神的にも“最後の砦”。
だからこそ、以下のような深層の構造が形成されやすい。
「失敗は許されない」という文化
「現場を守るのは俺たちだ」という誇り
「外部は現場を知らない」という前提
「どうせ変わらない」という諦め
「本音を言っても無駄」という学習性無力感
これらは、施策では動かない“深層のプロセス”。
■ 2. HRBPの“正しさの暴走” ーー”正しさ”が現場を遠ざけるとき
藤堂が悪いわけではない。むしろ、彼女は純粋に現場を良くしたいと思っている。
しかし、
製造現場の文化、背景、前提、常識などの文脈を知らない(わからない)
現場ならではの空気を読めない
自分の”正しさ”で押してしまう
現場の疲弊に気づけない
この状態では、組織開発は“逆効果”になる。
■ 3. 中間管理職のジレンマ ーー”板挟み”が生む沈黙の構造
佐伯は、経営と現場の板挟みになっている。
経営からの「変われ」
現場の「変わらない」
自分の「変えたい」「変わらなければなならない」
でも「どう変えればいいか分からない」
このジレンマは、中間管理職を最も苦しめる構造。
■ 4. 変化へのレバレッジポイントはどこか
変化は、施策ではなく、深層のプロセスから始まる。
意識
前提
関係性
組織文化
ここに触れない限り、どれだけ施策を重ねても変わらない。
実は、生産技術部の奥底では、すでに“静かな変化”が始まっている。
それは、表面からは見えない。数字にも、会議の議事録にも現れない。
深層で起きている変化は、いつも静かで、目には見えない。
けれど、それに気づいた瞬間、組織の風景はまったく違って見え始める。
次の第1話では、佐伯と藤堂がまだ気づいていない“見えない変化”の正体について扱っていく。
変わらないように見える組織の深層で、何が起きているのか。
この物語の裏側で動いていたプロセス、構造、関係性の変化
──その全体像は、このあと配信するメルマガで詳しく解説していきます。
よかったら、続きを受け取るために登録してみてください。
静かに、ゆっくりと深層を一緒に見ていきましょう。
👇読者購読はこちらから


































コメント