DEIBの効能とエンゲージメント:社員の離職率と組織文化の関係
組織における社員一人ひとりのエンゲージメントが
組織の生産性向上に大きく影響している、というのは、
組織経営や人材開発、組織開発の世界では、
昨今では当たり前の如く周知される事実となりました。
故に、社員の組織への帰属意識を醸成し、
一人ひとりのエンゲージメントを如何に高めていくか、ということは、
組織の生産性を高め、
持続可能な組織体制を構築していく上で、
喫緊の関心事であり、課題でもある、という組織は、少なくないでしょう。
そしてこの従業員エンゲージメントは、
会社の離職率と切っても切れない因果関係があることも、
広く周知されています。
2021年に米国の研究者たちが発表したある調査によると、
「有害な企業文化が離職の最も強い予測因子であり、
報酬よりも10倍も離職を予測しやすい」(出典:ATD's Organization Development Handbook)
ことがわかったそうです。
この研究では「有害な企業文化」を
・DEI:多様性(Diversity)、公平性(Equity)、包摂性(Inclusion)の促進を怠っていること
・労働者が”自分が尊重されていない”と感じること
・非倫理的な行動(ふるまい)がなされること
と定義しています。
人が生きていく上で、
報酬はもちろん重要なファクターであることは紛れもないい事実であるものの、
だからといって人は
「自分が受け入れてもらえているとは感じられない」
「皆が公平な扱いをなされているとは思えない」
「自分が大切にされていると感じられない」
「非倫理的な行動が横行している」
場には、居続けることは耐え難い、ということなのでしょう。
なぜなら、
人は自分が居る場所(働いている職場)に誇りを感じるとき、
自分自身のアイデンティティを確認し、満たすことができる
生き物だからであり、
それが人が「生きていること」の本質部分であるからです。
人は
多様性(Diversity)、
公平性(Equity)、
包摂性(Inclusion)
が促進されることで、
帰属意識(Belonging)
が芽生え、
自分が尊重されている(大切にされている)
と感じることができます。
それらが満たされているからこそ、
そこで人は安心して「自分らしく(authenticity)」そこにいることができます。
そういう場では人は自身が持つ価値を大いに発揮することでき、
それが自分自身のアイデンティティ確立の促進を助けます。
だからそういう場や機会をもたらせてくれる組織に人々は
ロイヤリティやエンゲージメントを見出していくことになるわけです。
「有害な企業文化が離職の最も強い予測因子であり、
報酬よりも10倍も離職を予測しやすい」
というのは逆に言えば
「優れた企業文化が定着の最も強い予測因子であり、
報酬よりも10倍もエンゲージメントを予測しやすい」
ということになるでしょう。
もしかしたら((customer_name))の組織では、
「十分にDEIBへの施策は講じているし、実践もしている」
という自負があり、それに対して多くの投資しているのかもしれません。
でも、肝心なことは、会社やその担当部署(多くは人事や組織開発の部署)自身が
「十分にやっている」という意識ではなく、
組織の現場で働く一人ひとりの社員たちが
「私たちは十分にこの組織から大切にされている」
「私たちは十分にこの組織の中では公平に扱われている」
「私たちはこの組織の中では安心して自分らしく存在でき、
十分に自身の価値を発揮できる場と機会がある」
と感じて日々を生きているかどうか、ということです。
人の内発的動機づけは、傍から操作できるものではなく、
人のエンゲージメントは、人の心の中に生まれてくるものですから。
人が行動することの動機付けとなるもの、
人が自らの意志で行動する動機付けとは何か、
という原理原則を頭に入れずに、
小手先のやり方で
「従業員のエンゲージメントスコアを上げるには、、、」
と躍起になっても所詮、無理なことですよね。。。
多くの組織で「1 on 1ミーティングが上手く機能しない」
という話を耳にしますが、
その多くの要因はそういうこと
(本質を置き去りにして、「やること」に躍起になっている)
なんだと思います。
その外に向けた指、自分自身に向けていますか?
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